殺風景な駐車場を、魅力あふれる公園に!『Park(ing) Day 原宿』

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竹下通りから脇道へ入り、南西に3分ほど歩いた先。閑静な住宅地の角にあるコインパーキングに、小さな人だかりができていました。集まっていたのは、駐車場を期間限定の公園へ変える取り組み『Park(ing) Day 原宿』に訪れた皆さん。アスファルトには人工芝マットや小さなベンチが置かれ、参加者は思い思いにアクティビティや談笑を楽しんでいます。一体なぜ、原宿の小さな駐車場でこのようなイベントが企画されたのでしょうか。実際にイベントを体験してきました!

ParkingをParkに

皆さんは『Park(ing) Day』という取り組みをご存じですか。その始まりは2005年、アメリカ・サンフランシスコで行われた一つのゲリラ的な実験でした。『REBAR Group』という学生アーティストチームは、パーキングメーターにお金を入れて、車を止める代わりに芝生や椅子を並べ、わずか2時間だけの小さな公園を作り上げました。まさに、ParkingをParkに変える。既存の仕組みを逆手にとり、何の魅力もなかった道路空間を憩いの場へと変貌させたのです。

20世紀、モータリゼーションが進む世界の都市部では、広くまっすぐな道路や画一的な公共空間が整備されてきました。このような従来の都市計画に反発し、既存のルールの中で、資金を要さず、自らの手で都市空間の魅力を取り戻そうとする『Park(ing) Day』の取り組みは世界中で大きな共感を呼びました。現在でも毎年9月第3金曜日には、路上駐車スペースを小さな公園に変えるパブリックスペースムーブメントとして、世界各地で取り組みが行われています。

そして2025年9月19日・20日、原宿で『Park(ing) Day 原宿』が開催されました。人工芝の敷かれた空間はこじんまりとしていながらも心地よく、参加者は落ち着いた雰囲気のなかで思い思いの時間を過ごしていました。

しかしなぜ原宿で、しかも閑静な住宅地の一角で『Park(ing) Day』が開催されることになったのでしょうか。その背景を紐解くように(一社)水と緑のまち 理事長・松井誠一さんによるトークセッションが行われました。

100年受け継がれた魅力を、100年後に

原宿表参道欅会で18年間理事長を務められた松井さんは、まさに原宿表参道の生き字引。明治神宮の建設に始まる表参道の成り立ちから、ワシントンハイツの建設、地下鉄千代田線の開通まで。街の姿を大きく変えてきた出来事を振り返りながら、その中で脈々と受け継がれてきた緑や景観、安全といった魅力が今の原宿表参道を形づくっていることを軽快に語りました。

▲(一社)水と緑のまち 代表理事・松井誠一さん
▲ファシリテーター 建築家・石田祐也さん

皆さんは、原宿表参道と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。欅並木に立ち並ぶラグジュアリーブランド、若者であふれる竹下通り、エッジの利いたショップが集まるウラハラ。でも何よりの特徴は、こうした商業エリアに隣り合う形で住宅が存在していることだと松井さんは語ります。大通りを一歩入れば、静かな細い道が伸び、その奥には人々の暮らしがある。職住近接が声高に語られる現代にあっても、これほど大規模な商業地と住宅地が自然に混ざり合う街はほとんどありません。

僕自身も原宿表参道新聞を始めて2年半、取材を通して感じたのは、住民の皆さんのこの街への強い愛情でした。何よりも住んでいる当事者が街に誇りを持ち、自らの手で景観を守ってきたことが、原宿表参道の唯一無二の魅力を育んできたのではないでしょうか。

しかし近年、その状況も揺らぎつつあります。東京を訪れる外国人観光客は年間およそ2500万人、そのうち実に3割以上が原宿表参道を訪れるといわれています。連日のインバウンド客で街がにぎわう一方、これまで住民と訪問者が共存してきた「古き良き原宿表参道」そのものが失われてしまうのではないかと松井さんは懸念を示していました。

そんな今だからこそ、大切なのは、住民を起点に小さな行動を積み重ねていくことです。今回の『Park(ing) Day 原宿』は規模こそ小さかったものの、これからの原宿表参道をどう守り、どう育んでいくかを考える一つの重要なきっかけになったように感じました。100年間受け継がれてきた緑や景観、安全といったこの街の魅力をどのように未来へ手渡していくのか。今回の取り組みがこれからどう発展していくのか楽しみです!

▲会場ではヘナタトゥーのワークショップも開催されました
▲モルックを楽しむ参加者の皆さん

■Park(ing) Day 原宿
日時:2025年9月19日(金) 17:00〜19:30、20日(土) 10:30〜14:00
場所:渋谷区神宮前1丁目15番
主催:10M2プロジェクト実行委員会
共催:NTTアーバンバリューサポート株式会社、一般社団法人ストリートライフ・メイカーズ、NPO法人green bird
協力:原宿表参道欅会、穏田表参道町会、NTT都市開発株式会社、認定NPO法人ADRA Japan

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