2024年8月30日(金)〜9月11日(水)まで、原宿にあるMEDEL GALLERY SHUにて個展を行っているももえさん。他の人には思いつかないような視点で作る彼女の作品は、多くの若者の心を掴んでいます。今回は、そんなももえさんが制作している時の思いや、見ている人に伝えたい思いを取材させていただきました。
原宿との繋がり
ーー今回、原宿にある「MEDEL GALLEY SHU」で個展をやることになった経緯はなんですか?
私自身、原宿にゆかりがあったとかではないのですが、去年この場所にあった「Anicoremix Gallery」でグループ展をやらせていただきました。そこからギャラリーのオーナーの方にお誘いいただいて、今回の個展に繋がっています。
ーー普段、原宿とかそんな来ないですか?
いや、行きます!服を買いに行きますね。ラフォーレとか。
ラフォーレで、「逆境ガール!」というショップのイベントみたいな、イラスト系のイベントに出させてもらったりとかもしました。あとはギャラリーもたくさんありますし、個人的に原宿は色々行く場所ですね。 やっぱり可愛いもの買いに行くってなったら、やっぱり原宿に行きたいですね。
「表面張力」に込めた思い
ーー今回の個展のテーマである「表面張力」に込めた思いだったりとかってありますか?
「表面張力」という名前をつけた理由は、コップいっぱいに水を張って、 ちょっとつんってしたらこぼれちゃいそうな感じを表してる言葉だからです。全部の作品にいえるんですけど、やりすぎても良くないし、やらなすぎても良くないしっていう、バランスが個人的に難しい、1番悩みどころな部分だなと作品を作る時にずっと思っています。それが自分の思いで、今回この展示に向けて作った全部の作品に共通してる部分なので、「表面張力」というタイトルをつけました。
ーー最近、私のXのおすすめ欄がももえさんの作品だらけです(笑)毎日どのくらいの人が来ていらっしゃるんですか?
カウントしていないので細かい数字はわからないですが、毎日空白の時間があまりなく、 お客さんが入れ替わり立ち替わりで来てくださっています。
ーー来てるお客さんから言われて1番印象に残ってることとかありますか?
展示に来てくれた方が楽しかったって言ってくれるのが一番嬉しいです。あとは、直接言われたことではないんですけど、Xで「サービス精神旺盛」って言われたのが嬉しかったですね。「エンターテインメント性が高い」とかって言われるのも嬉しいです。つまるところ「面白い、楽しい」なんですけど。それを言われると、ちゃんと伝わってるんだって思えます。
ーー上から女の子がぶら下がっている作品がとても印象的でした。立体の作品ってどうやって作るんですか?
あれは頼んで作ってもらったんですけど、そこにある4面図と顔の正面みたいなのの絵を描いて、大阪の方に頼んで作ってもらいました。実際に大阪に行って、途中経過を見たりとかして。どうしても立体が作りたくて、立体を宙に浮かせるっていうのがすごいやりたくて作りました。
自分らしい表現方法に
ーー美術を志すようになったきっかけは?
元々、なんとなくですけど、絵を描くのが好きで。高校1年生の時に手のデッサンの授業があって、それやったら、なんか上手だったみたいで、美術の先生に美大とか行かないの?って言われたのがきっかけです。でも、美大ってすごい人しかいけないものだと思ってたから、私のようなものでもいけるんだっていうのに、言われて気づきました。そこから、調べてみるうちに、面白そうなこといっぱいやってるし将来学ぶんだったらこれがいいなって思って、高校1年生の時に美大志望に決めました。今は多摩美術大学芸術学部グラフィックデザイン学科に入っていて、将来はデザイナーになるんだろうなって思いながら、デザインの勉強とかを頑張ってここまで来たんですけど、いつの間にかキャンバスに変わってました。
ーー今のような作品を作り始めたのはいつ頃からですか?
去年の4月からですね。村上隆さんが主催してらっしゃる、GEISAIというイベントがあって、そこに出展をしたんですけど、その時ちょうどキャンバスに絵を描くのが面白いって感じてた時期でした。そのために作品を作るってなった時に、どうせだったら自分の好きなことをしよう、やりたいことしようと思って、キャンバスに女の子を描いた作品をたくさん書いたのが始まりでした。結構展示の空間があったので、埋めなきゃっていう気持ちになって、たくさん作って、たくさん作るんだったら、1つの技法じゃなくていろんなことしたいしなっていうので、色々考えるようになってから今のスタイルになりました。
ーー毎日のように作品を作ってるんですか?
今4年生で結構今みんなが就活してる時期なので、みんな就活で忙しいだろうってことで大学も課題の手を弱めてくれてるので、今は大学のこと考えずに絵描ける状況って感じです。今後は卒制があるんですけどね。
ももえさんの生み出すもの
ーー今回は、この個展に向けて全部の作品を作られたそうですが、いつもテーマを考えてから、作品を作っているんですか?
いやそれが、テーマとかコンセプトとかもあんまりなくて。例えば、窓を拭いているみたいな作品があるんですけど、曇りガラスってちょっと遠くからみるとそのもの自体がぼやけて見えるじゃないですか。そういうのがすごい面白いなと思っていて。マスキングして、曇りガラススプレーを使うことで、きゅって拭いてるみたいな表現ができるんじゃないかって思ってやってみたりしています。見せたい部分だからこそ控えめに、それを表現するには1番どうしたらいいかとかを考えています。私の作る作品の背景は基本的に白なんですけど、あれの背景が黒なのは、曇りガラスなんだよっていうのをわかりやすくするためにしています。あとは、キャラクターをわざとビビットな色にしたりとか。やりたいことに納得感を持たせるために、色々後から設定していくみたいな感じです。
ただ、普段の作品作りから「伝える」ということは大事にしています。多分、デザインを学んできた名残です。でもそのデザインの名残、役に立ってるなって思っています。 「伝える」っていうところにこうフォーカスする時に、人に伝えるためにデザインはある、という今まで学んできたことが役に立ってるかな。大学に来てよかったなって思います。
ーーアイデアの出どころはどんなところからですか?
私は今、美大にいるので、いろんな技術に触れる機会が自ずと多くなります。私は結構油絵とか好きなんですけど、結構いろんなことするじゃないですか。 洋服使ったりとか、キャンバス割っちゃうとか、破っちゃうとか、炙っちゃうとか、いろんなことしてる人がいっぱいいて。面白いなって思った表現をいっぱい見て、思ったもののアイディアのストックを自分の中でいっぱい貯めておいて、やりたいことと、これよかったなっていうのがマッチした時に作品になるみたいなイメージです。
ーー私的にはももえさんの作品はどれも一目見て、これはももえさんの作品だなって、わかるなぁと感じています。そういう部分で意識されてることとかありますか?
いや、特にないんですけど、逆にどこでそう思われますか?
ーーもちろん、キャラクターの描き方が似てるってのもあるんですけど、表現の仕方がちょうど私たちみたいな世代が求めてる作品をそのまま作ってるなっていう印象があります。現代アートまで行き過ぎない、この自分が理解できる範囲ギリギリのところに作品があるなと思います。
それは私も意識してやってます。私自身も現代アートのくくりにいるとは思うんですけど、 正直現代アートわかんねえってよく思っていて、まだ勉強中です。それもあって、ここが面白いんだよとか、毛糸がぐちゃぐちゃなってるとこ面白いよねみたいな、そういうなんかポイントを相手に自分が面白いと思ったものをわかりやすく相手に伝えるっていう努力みたいなのをすごいしています。それがわからなくなっちゃうとその途端に、なんだこれはって なっちゃう気がしていて。私自身も作っててあんまり楽しくなくなっちゃうので。自分が楽しいし、人も楽しくなってくれると1番嬉しいっていう感じで作品を作っています。
ーー今後のことについて、教えてください
就職をしないで作家としてやるって決めたので、決めたからには頑張りたいとは思っています。美術ってどういう方向性でどう頑張っていけばいいのかっていう、道しるべが少ないというか、 人によって違うので、どうしたもんかなっていう悩みはあります。将来どうなればいいのかなとか、 将来は食べていけるだろうかとか。でも、作ることを嫌いにならずに、来年もこうやって個展とかやれたらいいなって思います。
取材を終えて
個展が始まってからの数日間、私のXのおすすめ欄のほとんどがももえさんの作品に埋め尽くされていました。良い意味でわかりやすく、美術を学んでなくても、直感でおもしろい!と思える作品って意外と少ないのかもしれません。ももえさんのメモ帳には、色んな表現方法が絵で書き留められているそうです。私もメモレベルから、絵、描いてみようかな。
最後に
「逃げないで 目、合わせようと見つめてる 空から降って視界に入る」
◾️ももえ
埼玉県出身
多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン学科学部4年在学 22歳
面白いものを作りたいと思い、キャラクターを媒体にしてそれを表現し作品を作り続けています。
〔個展〕
2023 「MAYBE」(Hidari Zingaro / 東京)
〔グループ展〕
2023 「Art Voyage: The Path of Expression 〜表現の道 〜」(A4gallery / 台湾)
2023 「台中藝術博覽會」(A4 gallery ROOM909 / 台湾)
2023 「advanced obsession」(Anicoremixgallery / 東京)
2023 「寸前と余談」二人展(白泉画廊 / 東京)
2023 「stay dreaming tune」(Room_412 / 東京)
2024 「Neo-Genesis: Tokyo’s Art Rebirth」(A4 gallery / 台湾)
2024 「Japanese Group Show」(GALLERY JO YANA / フランス)
2024 「FICTION」(新宿眼科画廊/東京)
〔賞歴〕
GEISAI#22 Mr.賞 受賞
〔イベント等〕
2023 GEISAI#22
2023 MCM3 クリエイターズマーケットinマルイ新宿ANNEX
2024「eyes」(大丸東京)