起業と子育て。あさのあつこさん新著『アーセナルにおいでよ』出版記念トークセッション

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左から戸高さん、福田さん、今井さん、三浦さん

起業家が子どもに読ませたい本1位!と噂の、累計1000万部突破の『バッテリー』シリーズ、『NO.6』などでお馴染みのあさのあつこさんによる新著、2024年9月24日に発売された青春小説『アーセナルにおいでよ』。その出版を記念して2024年12月2日、青山ブックセンターで子育て中の起業家たちによる、「子どもに読んで欲しい本」について語るトークセッションが開催されました。

登壇したのは、起業と子育て、未知の領域に奮闘しながらも活躍するSHE株式会社 代表取締役/CEO/CCO 福田恵里さん(以下:福田さん)、⇨株式会社heart relation共同創業者/取締役COO 戸高純さん(以下:戸高さん)のお二人。MCはThe Breakthrough Company GO 代表取締役 CEO 三浦崇宏さん、かつて絵本を描いていた経験がある株式会社IMAJUN 代表取締役・司会者で株式会社Headline Japan / IVS事務局 アライアンス担当 執行役員の今井遵さんが務めました。

セッションのはじめには『アーセナルにおいでよ』で編集を担当された水鈴社の篠原さんによるご挨拶がありました。あさのさんの本を出版することは篠原さんにとっても念願が叶ってのこと。篠原さんから10代の少年少女を題材にした本を書いてほしいとあさのさんにオーダーしたところ、起業の話を書いてみたいとあさのさんがおっしゃったそう。本日はその起業をリアルに体験されている方々のセッションということでとても楽しみにされていたとのことです。

生きるための武器をどうやって見つけていくのか?

14歳の頃から仲良しの福田さんと戸高さん。同じ滋賀県出身で、滋賀県はギャルが多いんだとか。ギャルマインドとスタートアップの関係性についてもお話しの中にありました。

福田さん「不可能を可能にしたり、ルーズソックスやカラコンなど新しい価値観やスタイルを創造する人種がギャル。新時代のスタンダードを作るという点ではスタートアップと同じですね。私たち滋賀県出身なので、ちゃんとギャルは通っています(笑)」

戸高さん「小嶋陽菜さんを見ててもギャルだと思います。社会に対しての”こう思う”をネガティブな形でなく自分で体現していて背中で見せるのがギャル。私もそういうタイプなのでギャルマインドを持っています」

あさのさんが作中で徹底して書かれていた「どうやって生きるための武器を見つけていくか」「どうやって居場所を作っていくか」。お二人の経験を交えて語られました。

福田さん「本を読んで一番に思ったのはスティーブ・ジョブズがAppleを退任させられた時に「自分の居場所は自分で作る」という言葉を残して退任されたエピソード。居場所って与えてもらうといいますか少し受動的なものと捉えられがちですが、自分が心地いいと思える環境を自分でデザインすることはすごく大事だなと思っています。正解がない時代に世界を変えていこうとする中で、どう自分自身の正解や自分の幸せを作っていくかというのが令和の時代だと思ってるので、大事なものがすごく詰まってる本だと思います」

戸高さん「読んでいて共感ばかりでした。大学生の頃にBASE株式会社(以下:BASE)でインターンをしてそのまま新卒で入社をしました。創業したばかりのBASEは学生が集まって起業したような感じで、みんな個性が強くて。すごいエネルギーを使って何か生み出してるっていうところに刺激を受けました。当時就活もしていたのですがいわゆる大企業で出会う大人とは良い意味でも悪い意味でも異なっていて。スタートアップの生き方や働き方が自分の居場所で現在の起業にも繋がっていると思います」

福田さん「SHE株式会社が運営しているミレニアル世代と呼ばれる30代の女性を対象としたキャリア支援事業のスクール、SHE likesでも受講生の方々に、皆さんが自分らしく生きていく武器と勇気を授けたいっていう話をさせていただいています。自分らしい人生を切り開くスキルは武器になるし、自分が自分でよかったと思えるマインドを身につけることは、自分を切り開く勇気になると思っているので、『アーセナルにおいでよ』はとても共通点があるなと思っています」

『アーセナルにおいでよ』は起業をテーマにしつつも最初から最後まで柔らかい空気感が流れ、今までなかった起業論アプローチが印象的です。お二人の居場所作りの話同様、はすれ者がはずれ者にされないで自分の力で自分の居場所を見つけることができる、まさに『アーセナルにおいでよ』作中に書かれている優しい文体と交差するエピソードばかりでした。

子育てで大事にしていることは?

福田さん「自分で人生の手綱を握って生きていってくれたら何でもいいなって思ってはいます。子育てから経営を学ぶことも結構多いです。会社経営で組織のマネジメントやメンバーのマネジメントをすること、人のモチベーションを上げることは子育てと似ています。お互いへ理解や愛などそういうところからしか信頼は生まれないし、承認をきちんとしてあげることも大事だなということを子育てと会社経営を重ねてよく思います」

戸高さん「自分のマインドとして他と比較しないことは意識しています。子育ても色々やった方がいいと言われることもありますが時間的にできないことも多いですし、それによって自分がダメだと思わないようはしています。自分のペースで子育てすることは大事にしているかもです。子育ての中で起こるコントロールできない部分はコントロールできないのでやるしかないという感じですね。大変と思いながら切り抜けています」

福田さん「仕事と子育て両取りするための思考でいます。子どもがいたからできなかったとか、仕事をしていたから子どもと遊べなかったとか、どっちかを犠牲にする二項対立で捉えてしまうとつらくなるので、自分だったら平等にするためにどんな工夫ができるかなと考えています」

起業家が子どもに読ませたい本は?

今回は事前に子どもに読んで欲しい、読み聞かせをしたいという本をお二方に選んでいただきました。(三田紀房著『インベスターZ』、岸見一郎、古賀史健著『嫌われる勇気』などがリストアップ)

戸高さん「起業家になって欲しいとか思っていません。マインドや考える力などを本を通して感じ取って欲しいです」

福田さん「共通するのはやはり生き方ですね。正解はないので、自分で生き方を自分で選んで欲しい。何でも正解だって思ってるので、幼いときから子供にはその思考を持ってほしいなというのはすごく思っています」

取材を終えて

起業家精神や子育て、次世代への教育がテーマとなり、とても興味深い内容でした。あさのあつこさんの新作『アーセナルにおいでよ』は、10代の若者が起業に奮闘する物語で、若者のみならず挑戦する人々の心を育むきっかけになりそうです。お二方のお話からは、自分の強みを活かす重要性、創造性が新しい価値を生む力になることを実感しました。また、子育てと会社経営の両立や、起業のリスクへの向き合い方といった話題も具体的でとても勉強になりました。最後に共有された「子どもに読ませたい本」のリストからは、各起業家の価値観や教育への思いが伝わり、選書理由を聞くだけで新たな視点が得られました。全体を通じて、挑戦することの大切さや未来を担う世代への期待を強く感じられるセッションでした!

セッション終了後の様子

▪️書籍情報
あさのあつこ『アーセナルにおいでよ』(水鈴社)
「おれ、今度、起業するんだ」
幼馴染で初恋の相手・芳竹甲斐から突然呼び出された高校3年生の川相千香は、その文章力と思索力を見込まれ、スタートアップのメンバーとしてスカウトされた。会社の名前は「アーセナル」。「武器庫」という意味だという。コンプレックスを持つ千香。中学生で不登校になった甲斐。詐欺に巻き込まれて逮捕歴のある稲作陽太。バツイチの古藤里佳子。それぞれ問題を抱えた4人は、各々の個性と能力を武器に、「アーセナル」のために奔走する――。

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