昨年からラフォーレ原宿B0.5階に開業した「愛と狂気のマーケット」は、多様な才能との出会いを楽しむマーケットです。コロナ渦を乗り超え、個性と彩が溢れ、驚きと面白さが詰まっていた70年代、80年代の原宿に原点回帰したクリエイティブの泉として、「愛と狂気のマーケット」は世界への発信を目指しています。
今回、「愛と狂気のマーケット」のリーダー、神田千穂さんに学生ならではの視点からお話を伺いました。
ラフォーレ原宿に狂気を
ーー「愛と狂気のマーケット」はどのようなマーケットですか?
「愛と狂気のマーケット」は毎月最大80のクリエイターさんや企業の洋服やアクセサリー、雑貨、書籍、伝統工芸品など、あらゆるジャンルの作品が集うカオスなマーケットです。
「愛」は出会い、「狂気」は才能という意味で、18年ぶりのラフォーレ原宿の自主編集売場です。
ーー「愛と狂気のマーケット」はどのように運営されていますか?
月初の作品入れ替え時には、クリエイターさん同士が直接ご挨拶頂ける「名刺交換会」や、月中でも、毎月1回PARTYを開催しています。PARTYは、クリエイターさん同士の交流はもちろん、お客様をお呼び出しするきっかけとなればと考えています。また、出品はクリエイターさんだけでなく企業様との新商品トライアル、新作発表の場、ショールームなどとしてもご活用頂いております。さらに、出品はクリエイターさんからの応募の場合もありますが、私自らSNSや個展・展示会に赴いてお声がけさせて頂くこともしています。
ーー「愛と狂気のマーケット」を企画した経緯を教えてください
2020年に新型コロナウイルスが流行り、ラフォーレ原宿の価値とは何なのかを改めて考える機会となりました。今はSNSが発展して、クリエイターは自分たちの力でECサイトを利用して売ったり、レンタルスペースで直接場所を借りて売るなど色々な選択肢が増えていく中、お客様やクリエイターさんがあえてラフォーレのような施設に来ることに価値を感じてもらうにはどうすれば良いのかを考えていました。そんな時に、株式会社gumi-gumiの代表の軍地彩弓(ぐんじさゆみ)さんとの会話の中で、「綺麗にまとまり過ぎていて優等生すぎる。狂気が足りない。」と言って頂いたことから「愛と狂気のマーケット」を企画しました。
クリエイターに寄り添い可変性のある売り場へ
ーーどんな売り場を目指したのでしょうか?
クリエイターさんが大変だなと思っていることを解消して、クリエイターさんのチャンスを生む場所を作りたいんです。
昔の原宿は「ここにしかない」ものを発信する場所でしたが、地代が高くなりすぎたことで面白いことをされている方が進出しづらくなってしまいました。また、新型コロナウイルスの流行も重なり「元来の原宿らしさ、自由な物づくりをされているクリエイターさんを受け入れ、夢を掴む場としての原宿力」を見つめなおす機会を得て、ラフォーレ原宿が懐を広くクリエイターさんを受け止めて、活躍いただくきっかけとなる場所を提供できるようにしたいと思ったんです。
ラフォーレ原宿の中でポップアップをクリエイターさんにお願いしても「2週間のスタッフを手配することが大変」「2週間分の在庫を作れない」と言われてしまうこともありました。ポップアップショップだと区画が大きくて在庫数や人手が沢山必要。そこで、このようなクリエイターさんの声を解消するクリエイターに寄り添った売り場を提供しようと思いました。ただのポップアップスぺースではない、売り場を提供する側とそこに出品するクリエイターさんとの関係性を作りながら、空間を作ることを意識しました。
ーー売り場へのこだわりを教えてください
クリエイターさんが際立ち、かつ、いつ来てもお客様が面白さを感じられる売り場にすることを目指しました。例えば各スペースに壁を作らず、自由度高くスペースを装飾できたり、毎月配置換えができたり、わざとジャンルの違う作品を並べたり、元のシンプルな売り場にクリエイターさんが商品や装飾を持ち込むことで映える売り場にすることでクリエイターさん毎の世界観を演出しやすくしています。売り場提供側が引く部分と出ていく部分を意識し、可変性のある空間づくりを実現しました。
ーー企画を推進する上で困難だったことはありますか
企画の時点で、自分の中で目指すべき形や成功するまでの筋道が明確にありました。しかしそれを言葉などで人に伝える、見える形にすることが難しく大変でした。比較的クリエイターさんには賛同いただけ、ご出品に繋がりやすかったのですが、社内に向けて、なぜこの企画を、今、これだけクリエイターさんに寄り添った条件でやる必要があるのかを言語化して説明することが大変でした。原宿に来る目的となる「ここにしかない場所」で、「ここにしかないもの」を売るという点は理解はされても、仕組みや組織体制をどう作るか、目指す形を見失わずに、限られた予算・資源の中で優先順位を考えながら、クリエイターさんに活用頂きやす場所として、また、「愛と狂気のマーケット」にしかない付加価値をつけていくという細かい調整が難しかったです。
神田千穂さんとラフォーレ原宿
ーーラフォーレ原宿で働くことになったきっかけを教えてください
お洋服が好きで大学時代、ラフォーレ原宿でアルバイトをしていた際に施設運営に興味を持ち今のお仕事に就きました。
昔から出かけることが大好きで47都道府県制覇や海外へ旅をして、新しい街並みや現地のカルチャーなど、見たことがない景色に出会うことが好きでした。ラフォーレ原宿は、訪れるとこの建物の中だけで様々なジャンルの見たことのないものに出会えるという点が共通していると思います。
ーーお仕事をする中でのやりがいを教えてください
毎月のPARTYや入替時など、クリエイターさんと直接お会いして、お話できる機会があります。「愛と狂気に一生出品し続けたい!」「こんなクリエイター想いの売り場はない」といった感謝の言葉をいただけた時にやりがいを感じます。そして毎月1日の夕方から新しい売り場が公開されるのですが、お客様が列を作ってオープンを待って下さっている光景を見ると今までのすべての苦悩や疲れが吹っ飛びます。
今後、愛と狂気のマーケットがコミュニティ化していき、そのコミュニティの輪が広がっていけば良いなと思っています。ゆくゆくは日本の伝統工芸品も多数扱って、外国人旅行者に、色々な日本のモノづくりを見る場として「愛と狂気のマーケットには行かなくちゃ!」と思ってもらえるように世界に向けた発信をしていきます。
頭の中にあるアイデアを沢山の人々を巻き込みながら実現されている方に、インタビューをする機会を頂けて本当に光栄です。神田さんのマーケットに対する熱意が伝わってきました。今後の「愛と狂気のマーケット」の活躍から目が離せません!!
(編集:tannely イトウノリコ)
◾️神田千穂 略歴
2006年新卒で入社。以来17年間ラフォーレ原宿に勤務。一児の母。
現在は、ラフォーレ原宿の自主編集売場「愛と狂気のマーケット」リーダーとして、「才能をもったすべての方の受け皿となり、新たな出会いの場となる、ここにしかない売り場」作りを探求中。
◾️愛と狂気のマーケット
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◾️ラフォーレ原宿
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