【ハラオモ会議vol.1】「香り」の記憶を物語に。原宿表参道の「香り」をめぐる

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原宿表参道の街に飛び出し、ライターや街の人と一緒に、この街の歴史やカルチャー、そして原宿表参道新聞そのものについて語り合う「ハラオモ会議」。その記念すべき第1回となる今回は、2025年11月17日(月)にBEAMSのスタッフさんや、ラフォーレ原宿の安藤館長ら総勢15名が参加し開催されました。
今回のテーマは「香り」。原宿表参道の街を日々つくっている人たちが集まり、香りをもとに思い出をたどり、言葉にしていく——そんな会議としてスタートしました。

アロマの魅力を五感で体験

▲AEAJグリーンテラス外観(画像提供:公益社団法人 日本アロマ環境協会)

会場となったのは、アロマテラピー関連の公益法人である「公益社団法人 日本アロマ協会(AEAJ)」が運営するアロマテラピーの魅力発信拠点「AEAJグリーンテラス」。明治神宮前駅から徒歩3分。明治通りから少し入った「街の奥の静けさ」が感じられる立地。建物は大きなガラス面と緑が印象的で、ガラス壁を通して木組の内装が印象的なデザイン。そう、ここは世界的な建築家・隈研吾さんの設計によるもの。

一歩中に足を踏み入れると、国産ヒノキの天然の香りに癒されます。1階には香りにまつわる企画展を行う「アロマラウンジ」や、世界中から集めた約250種類の精油の香りを体験できる「アロマラボラトリー」などがあります。

▲特別展「調香ミュージアム~香りを紡ぐ、秘密の世界」(2026年1月31日まで)

AEAJ広報課 課長の川崎春奈さんによるお話からスタート。現在開催中の特別展「調香ミュージアム~香りで紡ぐ、秘密の世界」の多彩なコンテンツの解説をしていただきました。
今回の特別展は、古代から現代までの香りの歴史を網羅する年表や、レジェンドと呼ばれる香水、香りの辞書づくり、普段はなかなか嗅ぐことのできない単品香料の香りなど、香りと調香にまつわる内容を多角的に網羅した展示。参加者の皆さんもメモをとりながら興味津々に聞いていました。

香木や植物の歴史、種類ごとの香りの違い、そして香りが私たちの記憶とどう結びついているのか——。
参加者は展示やサンプルの香りに実際に触れながら、普段なんとなく受け取っている香りの奥行きを知っていきます。

▲(右上)約250種類の精油が体験できる「アロマラボラトリー」、(右下)54種類の精油がマッピングされた展示コーナー

「わ、懐かしい」「これ好きかも」
そんな声が自然と漏れる時間。街の空気を構成する“要素”としての香りを、みんながあらためて意識した瞬間でした。

3階のイベントスペースへ。香りから“物語”をつくるワークショップ

レクチャーのあとは、3階のイベントスペースに移動し、本編のワークショップへ。テーマは「街と私の香り」。「アロマラウンジ」で受けた香りの刺激を手がかりに、“香りが引き出す物語”をつくっていきます。

ワークは「書くことの3ステップ」を軸に進行しました。

  1. 取材(観察):展示で出会った香りと、呼び起こされた記憶を拾い集める
  2. 解釈(編集):その香りが“なぜ”自分にとって特別なのかを考える
  3. 表現(執筆):思い出・感情・理由をつなぎ、短い物語として書く

香りは記憶を呼び起こすトリガー(刺激)。
そのトリガーをもとに、記憶を思い出し、なぜそれを思い出したかを考え、物語に落とし込みます。
3〜4人のグループで対話しながら作品を仕上げ、最後はグループごとに発表しました。

「学生時代に読んでいたコミックを思い出した」
「放課後の校庭の匂いを思い出した」
「祖父母の家の朝の匂いだった」
「オイゲノールを嗅いで小学校4年の夕方4時のあの匂いを思い出す」
「新入社員のころ、渋谷駅のホームで感じた香りが表参道につくと消えていた」
そんな個人的な記憶が、静かに物語になっていきました。

原宿表参道という同じ街で過ごしていても、そこに重ねている“香りの記憶”が全く違うことが、かえって街の豊かさを感じさせる発表会になりました。

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