「平和なくして経済なし」ノーベル平和賞受賞者世界サミット アジア統括事務所例会にて原宿の父・八木原保氏が語ったサミット東京開催への想い

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2025年11月13日。ノーベル平和賞の理念をアジアに広めるべく、ノーベル平和賞受賞者世界サミット アジア統括事務所(代表:伊東玄聖)の第2回例会が、神宮前一丁目の東郷神社に併設されたルアール東郷で開かれました。

会場には、平和、教育、文化、経済など多岐にわたる分野のリーダーが集結。1999年から続くサミットの歴史と精神を受け継ぎ、熱心な対話が行われました。

会の締めくくりとなる懇親会では、一般社団法人日本メンズファッション協会 理事長でもある八木原保氏が登壇。長年「原宿の街づくり」を牽引してきた八木原氏ならではの視点で平和と経済の結びつきを語り、会場は熱気に包まれました。

ノーベル平和賞受賞者世界サミット「その起源と理念」

▲2010年ノーベル平和賞受賞者世界サミットが開催された広島

このサミットは、1999年の第1回開催から昨年度で25年の節目を迎え、これまでに世界10カ国11都市で計19回のサミットを開催してきました。

その背景には、1990年に同賞を受賞したミハイル・ゴルバチョフソビエト連邦元大統領の強い想いがあります。かつてノーベル賞は、授与そのものがゴールとなりがちで、受賞後の継続的な連携やフォローアップの機会は多くありませんでした。

歴代の受賞者たちと対話を重ねたゴルバチョフ氏は、こう考えました。

「世界中で命を賭して平和活動に尽力する受賞者たちが一堂に会し、その声を結集させれば、世界を変えるより大きなムーブメントになるはずだ」

世界をより良くしたいというこの崇高な理念から、本サミットは発足しました。

八木原保氏「世界平和こそが経済の基盤」

▲八木原保アジア統括事務所理事による乾杯の挨拶

本イベントのハイライトとなったのは、懇親会冒頭に行われた八木原保アジア統括事務所理事による乾杯の挨拶です。
その中で語ったのは以下の3点です。

1. 原宿の変遷と平和への想い

八木原氏は、1965年から約60年にわたり、かつて静かな住宅地だった原宿を「世界が注目するファッションの街」へと変貌させた立役者です。行政と地域が一体となって街づくりを行ってきた経験を振り返りながら、「次の世代のために私たちができる最も大切なことは世界平和である」と力強く語りました。

2. 「平和なくして経済は成り立たない」

スピーチの中で最も印象的だったのは、ビジネスの最前線にいる八木原氏だからこその以下のメッセージでした。

「今、世界が一番求めているのは世界平和だと思うんですね。やっぱり平和なくして経済は成り立たないじゃないですか」と不安定な世界情勢の中で、経済活動を行うためにも平和という土台が不可欠であることを強調し、参加者にむけて強く呼びかけました。

3. 「東京サミット」実現への悲願

2026年にバチカンで開催予定のサミットに続き、いつか東京・原宿でサミットを開催したいという思いを明かしました。「平和ボケ」とも言われる日本だからこそ、東京でサミットを開催し、世界へ平和のメッセージを発信する意義があると訴えました。

最後は、「東京サミットの実現」と「参加企業の発展」を祈念し、高らかに「乾杯!」の発声を行いました。

上野景文氏 「バチカンを通して見る西欧文明の正体」

▲元バチカン大使の上野景文氏よる基調講演

私が震えた「中世の遺物」の最強ソフトパワー

基調講演に登壇したのは、元駐バチカン大使の上野景文氏です。2006年から1400日に及ぶ駐在体験に基づくその講演は、単なる外交報告にとどまらず、「バチカンという『中世の遺物』が、なぜ現代でも最強のソフトパワーを持つのか」という鋭い分析に満ちており、筆者もその視点の独自性に強く引き込まれました。

1. アニミズムの日本 vs 一神教のバチカン

上野氏はまず、自身の外交官人生を通じて確信した「日本文化の基層にあるアニミズム(多神教)」について触れました。その対極にあるのが「一神教の牙城」であるバチカンです。上野氏は、あえてその異質な環境に飛び込み「文明対話」を行うことこそが赴任の動機であったと振り返ります。

2. 驚き:「近代国家ではない」のに最強

講演の中で特に印象的だったのは、バチカンを「近代国家の要件(国民国家・民主主義・政教分離)を欠いた中世の遺物」と断言した点です。しかし、その「遺物」には世界中からVIPが押し寄せ、絶大な影響力を持っています。

その源泉は、「教皇」という装置を設けたことによる2000年の継続性と、世界規模のネットワークにあります。通常の宗教が分裂を繰り返す中、バチカンだけがひとつのレジームを維持し得たのは、この「教皇本位制」のおかげである――。「中世のシステムだからこそ最強である」という逆説的な考察は、まさに目から鱗が落ちる思いでした。

3. 会場がどよめいた「文明は我々が創った」

そして、この日会場が最もどよめいたのは、上野氏が着任時にある枢機卿から言われたという衝撃的な言葉が紹介された瞬間でした。

「文明対話をお望みであれば、バチカンに来られたことは正解だ。『文明』は我々が創ったのだから」

上野氏は、EUやUNESCO、そして本サミットのテーマである「ノーベル賞」さえも、バチカンが作ったシステム(=ミニバチカン)の延長にあると解きます。「西欧文明の根底には常にバチカンの構造がある」。 バチカンというレンズを通すことで、現代世界の仕組みがより鮮明に見えてくるというこの視点は、平和や経済を考える上でも非常に示唆に富み、参加者に強烈なインパクトを残しました。

イベントハイライト「知と対話の融合」

八木原氏の挨拶に至るまで、本例会では多彩なゲストによる講演が行われました。

▲イベントハイライトの様子

主催者挨拶:伊東玄聖氏(アジア統括事務所 理事長)

伊東理事長は、創設者ミハイル・ゴルバチョフ氏の言葉を引用しつつ、「平和とは遠い理想ではなく、日常の中に息づく実践である」と強調しました 。アジア統括事務所は単なる支部ではなく、アジアから平和への新しい視点を発信する使命を担う拠点であるとし、分断の時代だからこそ「人と人との出会い、理解、協働」が平和の礎になると語りました 。

その実現に向け、2026年より以下の3つの柱を掲げて活動を展開する方針を発表しました

国際的対話の促進(バチカンサミットへ向けて)

分野を超えた国際フォーラムの開催に加え、2026年10月には第20回サミットを原点であるバチカン市国で開催することを発表しました。「心の平和と倫理」をテーマに、日本・アジアからのメッセージを世界へ発信する準備を進めています 。

平和教育の拡充

次世代が対話と共感を学ぶため、大学と連携した平和学カリキュラムを拡大します。さらに、インドの人道支援団体「アートオブリビング」と提携し、学生が世界で活躍できるインターンシップ制度の導入などを進めていく意向を示しました 。

文化と平和の融合

芸術やファッションなどを通じ、心の豊かさと社会的調和を結びつける活動を行います。具体例として、株式会社ナンバードット(サウザンド・ウィングス)と連携したプロジェクト『Happy to Be Me』を挙げ、自己肯定感の向上をベースとした優しい社会の構築を目指すと述べました 。

来賓挨拶:長谷部健 氏(渋谷区長)

開催地である渋谷区の長谷部区長は、「ちがいを力に変える街・渋谷区」という基本構想に触れ、原宿という多様な文化が交わる場所で平和を考える意義について賛辞を送りました。

 基調講演ペレラ氏(元スリランカ大使)

  • テーマ: 「外交、相互の尊敬と理解を通して平和を育む」
  • 要旨: 1951年のサンフランシスコ講和会議でスリランカが日本への賠償請求権を放棄し、「憎悪は憎悪によって止むことはなく、愛によってのみ止む」と説いた歴史的エピソードを紹介。「平和は自身の心から始まる(Let peace begin with me)」と訴えました。
▲イベントハイライトの様子

最後に

ゴルバチョフ元大統領の提唱から始まった「平和の連帯」は、四半世紀を経て、ここ東京・原宿へと繋がれています。本イベントは、単なる平和会議にとどまらず、八木原氏の言葉にあるように「経済と平和の不可分な関係」を再確認する場となりました。文化の発信地である原宿から、世界へ向けて新たな平和のメッセージが広がっていくことが期待されます。

開催概要
開催日
 2025年 11月 13日

  • 午後5時〜5時15分  開会のあいさつ、趣旨ご説明
  • 午後5時15分〜5時30分 来賓挨拶
  • 午後5時30分〜6時30分 キーノートスピーチ
  • 午後6時30分〜     懇親会

場所 ルアール東郷 渋谷区神宮前 1-4-20

主催 World Summit of Nobel Peace Laureates(ノーベル平和賞受賞者世界サミット)

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