ビームスが提案する『モノを売らないお店』。『つづく服。』プロジェクトリーダー 桑原優季さん 〜ストーリーの交換からうまれる、新たなモノの価値。そしてつづいていくストーリー

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2023年10月20日から22日の3日間、原宿のJOINT AROUND the CORNER(東京都渋谷区神宮前)に、想いの詰まった”モノ”を持参した人々が集った。期間限定でオープンしたのは『モノを売らないお店』。この取り組みは、ビームスが2021年に発足した『つづく服。』プロジェクトの2周年を記念し、モノとモノ、さらには人の”想い”の交換を通じ、新たなモノの価値やライフサイクルについて考える機会として提供された。

モノとモノとの交換を通じ、人の”想い”がつながるお店

1976年創業時より原宿に出店し、世界各国で『モノを売るお店』を展開するセレクトショップのビームスが、『モノを売らないお店』をオープンした経緯について、『つづく服。』プロジェクトリーダーであり『モノを売らないお店』の責任者である桑原優季さんにお話を伺った。

「『つづく服。』は、サステナブルなアイディアや取り組みを紹介するWEBメディアとして、2021年6月に発足いたしました。2021年に45周年を迎えたビームスが、ファッションが好きだからこそたどりついたプロジェクトです。ファッションが好きな人の暮らしにおけるサステナビリティの提案は、これまでセレクトショップとして数多くのマーケットに提案をおこなってきた私たちの大きな役割です。その2周年記念となる『モノを売らないお店』は、“つづく”をテーマに、モノとモノとの交換、そしてそこにある”想い”を軸に展開しています」(桑原氏)

『モノを売らないお店』は、会場に出品されているアイテムをお金で買わず、持参したアイテムと交換する場。基本的には1アイテムと1アイテムを交換するルールとなっている。来店者は事前に規約を確認し、エコバッグ等も持参したうえで参加する。と書くと、単なる物々交換を想像するかもしれないが、本プロジェクトの目的は一味も二味も違う。

「モノだけではなく、”想い”と”想い”の交換です。モノに対する愛が、人の”想い”によって高まる感覚をお客様と共有できると信じています。この場での体験が、モノの価値を改めて捉え直し、ライフサイクルについて考える機会となることを願っています」(桑原氏)

ストーリー交換からつづくストーリー

ここからは会場の様子をレポートしていこう。取材に訪れたのは初日の20日。15時オープンの少し前に、桑原さん以下、スタッフの方々によるご説明やブースツアーがおこなわれた。

店内には、大きく分けて2つのブースが設置されている。ひとつは、大切にしてきたモノと”想い”を交換する『ストーリー交換ブース』。ビームスのスタッフや『つづく服。』プロジェクトに共感したクリエイターたちが、それぞれに想い入れのあるアイテムをセレクトし、出品している。

実際に手にとってみると、すべてのアイテムに出品者の”想い”が綴られたタグが取り付けられている。アイテムとの出会い。愛用してきた日々。印象的なエピソード。人とモノがともに過ごしたストーリーが綴られていて、来店者はその”想い”とともにモノを選ぶ。

来店者もまた想い入れの深いアイテムを持ち込んでいる。会場内には『つづく服。』専用の用紙にエピソードを記入するコーナーも設けられ、来店者もその場で”想い”を綴る。そして、持参したアイテムと交換したいアイテムへの”想い”をSNSでも発信することで、物々交換が完了する。

その後、来店者の持参したアイテムとストーリーが、今度は出品側として店頭に並び、新たな来店者とのご縁を待つ。買い手が売り手となる循環型のシステムによって、モノのストーリーはエンドレスにつづいていく。モノにとっては、この場が新たなストーリーの幕開けとなり、経済価値や市場原理とは一線を画した新たな魅力を見出される舞台となるのだ。

取材時には、実際に出品されたスタッフの方々の”想い”も伺えた。鮮やかなピンクのシャツを出品された宣伝の稲垣文彦さんは「大好きなブランドなのですが、男性女性問わず、自分よりもっと似合う方に着ていただいて、洋服の楽しさを感じてほしいです」。

経営企画部の新谷かの子さんは、ファッション好きなお父様から譲り受けたTシャツを出品。「父から洋服を買った時のエピソードをよく聞いていたので、私もストーリーを語れるようになりたいなと。気に入ってくださる方がいて、つづいていったら嬉しいです」

ビームス クチュールというリメイクが特徴のレーベルでデザイナーをしている水上路美さんは、衣服を使いつづけるプロフェッショナル。「今回はリメイクできないアイテムとして、サイズアウトした子どものタイツを出品しております。これからの季節に使いやすいタイプなので、楽しんでいただけたら嬉しいです」

スタッフ以外にも、『つづく服。』に賛同してくれたクリエーターのアイテムも並んでおり「『つづく服。』でお世話になっている方や、”想い”をつないでいくというテーマに共感し、自らつないでいきたいものがある方にご協力いただきました」(桑原氏)。同ブースには、スタッフの知識や興味を活かして働いているお店や自身で立ち上げたブランドの商品も陳列され、それぞれの愛情がたっぷり詰まった空間が広がっていた。

もうひとつ、会場の奥に設置されていたのが、素材に応じてリユース・リサイクルをおこなう『再循環ブース』。このコーナーには、ビームスの経年在庫や店舗で使用していたハンガー等、商品として販売予定のないアイテムが集結。

来店者は衣料品回収サービス「BRING™️」のシステムにならって回収協力することによって、アイテム交換ができる。この『再循環ブース』と『ストーリー交換ブース』、どちらに参加するかは、来店者の持ち込んだアイテムによって決まる仕組みとなっている。

システムのご説明をお聞きした後、ふと入り口付近を見てみると、15時のオープンを待つ来店者による大行列が。テレビ局の取材も入り、反響の大きさが伺える。3日間の来客者数は260名。約1200アイテムが交換される大盛況のイベントとなった。

桑原優季さんインタビュー 『つづく服。』からつづく循環の輪

最後に、改めて桑原さんにサスティナビリティについてのお考えを伺った。

――世界全体で衣服のサステナブルな取り組みがなされていますが、やはりリユース、リサイクルには力を入れていらっしゃいますか。

桑原さん:『つづく服。』のプロジェクトのリーダーとしてお話ししますと、リユース、リサイクルについてはBRINGさんの理念に共感し一緒に取り組んでいます。ただ私の考えとしてはそれは一つの選択肢であって、根本にあるのはモノの大切さをどう見つめ直すかということ。お洋服が大好きな私たちが、同じようにお洋服が大好きな方々と一緒に楽しみ、考えるきっかけを作ることを最重要視しています。

――『つづく服。』のWEBサイトから情報を発信するのみならず、双方向的なコミュニケーションを促す場として『モノを売らないお店』は機能しているということでしょうか。

桑原さん:そうですね。出店ブースに立つスタッフも、積極的にお客様とコミュニケーションを取り、会話を通じてモノの価値観を交換し、新しい気づきを得ていただけるような役割を担っています。お客様には、自分が大事にしている服の行く先の選択肢が、ここに来てひとつ増えるところに楽しさを感じてもらえればいいなと。

――循環型の面白さも魅力のひとつです。

桑原さん:まさに『つづく服。』として、ひとりひとりの交換から、どんどん循環の輪が広がっていきます。まずはスタッフからお客様へ。そして今回はクリエイターの方も参加してくださっているので、ビームスのファン外の範囲にも届く、大きな広がりを目指しています。

――クリエイターの方の知名度やヴィンテージの商品価値、付加価値が話題となる可能性もありますが、そうではなく、もっと手前の人の”想い”に軸を置いている?

桑原さん:そうですね。正直に申し上げて、出品アイテムの中には、値段をつけたら高額なヴィンテージもあります。ですが市場の値打ちではなく、そのモノに込められた人の“想い”を見て、素敵だな、受け継ぎたいなと感じていただいた方にお持ち帰りいただきたいです。

――ありがとうございます。最後に、この原宿・表参道エリアで本プロジェクトを実行した意図や理由があれば教えてください。

桑原さん:原宿はビームスが創業した原点ですので、初めての取り組み、新たな提案の出発点も原宿がいいと思っていました。ビームスと同じように、このプロジェクトの循環の輪が原宿や渋谷を中心にどんどん広がっていくといいなと考えています。

――桑原さんにとって原宿・表参道エリアの魅力とは?

桑原さん:個人的に、ビームスが創業の地として原宿を選んだ理由とつながるのではないかなと想像しているのですが、人々の個性がとても豊かで、自分をしっかり表現しやすい場所だと思っています。いろいろな捉え方をしている方々が集まって、いろいろな思いが入り乱れて、自分なりの何かを見つける。そんなところに魅力を感じます。

モノと人のストーリーが、人を魅了し、”想い”が受け継がれていく。市場とは切り離し、モノを心で捉え、モノと人との関係性を見つめ直す。『つづく服。』プロジェクトから誕生した循環のライフサイクルはこれからもつづいていく。

◾️桑原優季 略歴
岐阜県大垣市出身。スタイリストのアシスタントを経て2015年にビームスに入社。販売員、プレスを経験し、2020年から現在の宣伝課に。スポーツや美容、アウトドア、音楽などライフスタイル全般に紐付くプロジェクトや協賛案件などを担っている。

◾️つづく服。ウェブサイト
https://www.beams.co.jp/special/tsuzukufuku/

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