
2025年5月2日から11日、UNKNOWN HARAJUKUにて「ゴミと鉛筆とアート展」が開催されました。この展覧会は、特定非営利活動法人CLOUDYと三菱鉛筆株式会社が共同で展開する「チョコペン(CHOCOPEN)」プロジェクトの始動を記念して開催されたものです。
ガーナで廃棄されているカカオの殻を再利用し、鉛筆へと生まれ変わらせた「チョコペン」。筆者はCLOUDY代表の銅冶勇人さんと三菱鉛筆の数原滋彦社長が登壇したトークイベントに参加し、プロジェクト誕生の背景や現地でのエピソードについてお話を聴きました。

会場に足を踏み入れると、まず目を引いたのは足元の床材です。「これはガーナで捨てられていたカカオの殻です」と聞き、ただの展示イベントではないことをすぐに感じ取ることができました。
チョコペンに込められた、ガーナと私たちをつなぐ物語

「カカオ農家の方に“チョコレートを食べたことがありますか?”と聞くと、“見たことも食べたこともない”と言われました。その事実に衝撃を受けました」
ガーナで放置されたカカオの殻は、土壌環境を破壊し、蚊を媒介とした感染症の温床にもなっています。その“ゴミ”が、鉛筆へと生まれ変わり、再び人の手に握られる。この循環が、多くの気づきを私たちに与えてくれます。
「鉛筆には、誰もが持っているあたたかい記憶があります。けれど今、その温度を知らずに育つ子どもたちが、世界には3億人もいます。そのうちの3人に1人が、アフリカの子どもたちなのです」(銅冶さん)

またチョコペンを購入すると、鉛筆がガーナの子どもたちに寄付される仕組みも導入されています。単なる支援ではなく、現地の工場で雇用を生みながら生産し、持続可能な形で社会課題の解決に取り組んでいる点が、このプロジェクトの大きな魅力です。
「これはゴミの展示ではなく、未来への提案です」というファシリテーターの堀潤さんの発言がとても印象的でした。
社会課題への入り口に「アート」という優しさを

トークの終盤では、アートが持つ力についても語られました。
「誰かにあげたくなる鉛筆って、これまでにありましたか? このチョコペンが、そんな存在になってほしいんです」(銅冶さん)
日常の中で「自分が使っているものは、どこで誰が作ったのか?」という問いを立てることが、世界とのつながりを生み出します。この鉛筆は、私たちの暮らしと地球の裏側の現実をやさしく結びつけてくれます。
“ゴミから鉛筆をつくる”というシンプルな構想の裏には、現地の雇用、教育、環境、そして私たちの消費行動までつながる複雑なレイヤーがあります。そんなことを静かに教えてくれるトークイベントでした。
■ゴミと鉛筆とアート展 概要
会期:2025年5月2日〜5月11日
会場:UNKNOWN HARAJUKU
入場料:無料
主催:特定非営利活動法人CLOUDY/株式会社DOYA
協力:三菱鉛筆株式会社