この人に会いたい、というバリスタ THE ROASTERY BY NOZY COFFEE 押本陸さん【前編】

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コーヒーに興味はあるけど、どう楽しめばいいのかわからない。
そんな“コーヒー初心者”の方にこそおすすめしたいお店があります。
原宿・キャットストリートにあるコーヒーショップ、THE ROASTERY BY NOZY COFFEE。
今年で10周年を迎えるこのお店で、押本陸さんは開店当初からバリスタを務められてきました。
今回はそんな押本さんに、バリスタの仕事やコーヒーの魅力など、さまざまなお話を伺いました。(前・後編)

バリスタの舞台となる店

「店内に入ると、まずは中央のカウンターで注文をしていただきます。当店のメニューは主に2つ。
1つはエスプレッソを使ったドリンク。カフェラテやアメリカーノなどのベースとなる基本のコーヒーです。抽出のレシピやマニュアルは設けていないので、バリスタごとの微妙な風味の違いも個性としてお楽しみいただけます。
もう1つがハンドブリュー。ハンドブリューでは、お客様の好みにより近いコーヒーをお楽しみいただけます。奥のカウンターで、バリスタと様々な種類の豆を囲んで香りをお試しいただきながら抽出方法・レシピなどを調整し、要望に沿ったコーヒーを作っていきます」

「注目してもらいたいのがこのエスプレッソマシン。エスプレッソマシンは普通のカフェだと店の端にあることが多いんですが、当店ではアイランドカウンターの中に大きなマシンが2台。店内のどこからでもバリスタの動作を見ることができます」

▲店内のエスプレッソマシン。エスプレッソの抽出にはさまざまな諸条件が絡むため、一回一回テイスティングを重ねレシピを作るといいます。

「この店で働くスタッフは全員がプロのバリスタ。バリスタはエスプレッソの抽出や豆の販売はもちろん、レジでお客さんにコーヒーの話をプレゼンしたりというような接客の仕事も行います。 
まさに、バリスタの舞台となるような店。ここに来れば、バリスタが一体どんな職業なのか多くの人に知ってもらえます。僕もこんなお店があればもっと早くバリスタのことを知れたかなと思いますね」

コーヒーの世界を少しだけ見せてあげる

「たまに『コーヒーをおいしく淹れたい』という理由でバリスタになる子が来るんです。でも『それなら家でできるよね』と僕はいつも言っています。ただコーヒーを淹れるだけ、ただ豆を売るだけではなく、コーヒーを通じてどんな体験をしてもらえるか。それがバリスタとして一番大事なことだと僕は考えています。
コーヒー好きの方の世界はもっと広げてあげる。そして、コーヒーを知らない方にはその世界を少しだけ見せてあげる。例えば、10代の初めてコーヒーを飲むお客さんに、やれ生産処理がやれ誰々が、と細々説明するのは無粋ですよね。まずは美味しいコーヒーを出して、美味しいと感じてもらう。『コーヒーってこんな味がするんだ』『コーヒー飲めないと思ってた』というようなポジティブな驚きを届けられた時は特に嬉しいです」

▲今回の取材でお出しいただいたエスプレッソレモネード。僕の中で今まで苦いというイメージしかなかったコーヒーが、こんなにも爽やかに感じられたことが驚きでした。

この人に会いたい、というバリスタ

「久しぶりに来るお客さんが誰かいるかなと奥を見たり、10代の子が何屋だろうとのぞいてきたり、このカウンターに立っていると、お店に入ってくるお客さんの気持ちが顔や歩き方で伝わってきます。その時々に合わせて、もし僕がお客さんだったらどういう風に出迎えて欲しいかを考えて接するようにしています。常連の方には『覚えてた!?』と驚いて、初めての子には『ただのコーヒー屋だけど見ていきます?』と誘ってみて。忙しくて話せない時も、手を振ったりアイコンタクトを取るだけでも違います。ただコーヒーを淹れるだけならいつか機械の仕事が僕たちを抜くかも知れない。けど、そうなった時にこそお客さんに『この人のコーヒーが飲みたい』『この人に会いたい』と思ってもらえるバリスタが必要になると思います」

後編では押本さんのバリスタを志したきっかけや、コーヒーを通じて描く将来の夢について伺います。
後編記事はこちらからご覧ください。

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